大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(ネ)528号 判決 1975年8月07日

控訴人

甲田康郎(仮名)

右訴訟代理人

渡辺千古

被控訴人

乙原たか(仮名)

右訴訟代理人

井田邦弘

ほか二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

職権をもつて本訴の適否について判断する。

本件は亡乙原太郎(仮名)の死亡当時妻(後妻)であつた被控訴人が、戸籍上太郎とその先妻甲田乙子(仮名)との間の子として届出がなされている控訴人を相手方とし、亡太郎と控訴人との間に親子関係の存在しないことの確認を求めるものである。おもうに、第三者である被控訴人が亡太郎と控訴人間に父子関係が存在しないことの確認の訴を、控訴人のみを相手として提起することが許されるか否かについては疑問の点がないでもない。

このような親子関係存否確認の訴も人事訴訟事件として取り扱われ、人事訴訟法の規定が類推適用され、それに対する確定判決も対世的効力を有するとされているから、本件の場合戸籍上、訴外甲田乙子と控訴人は母子関係にあるものとして依然残されることになるわけであるが、本件の場合このことは決して好ましい結果ではない。

このような結果を避けるためには、右乙子と控訴人を被告とするか、或いは亡太郎の代わりとして検察官をも加え三者を被告とするのが妥当であるという見解も充分根拠のあることである。

しかし第三者が提起する親子関係存否確認の訴にも人事訴訟法二条三項の類推適用があるとする最高裁昭和四五年七月一五日大法廷判決の趣旨に鑑み、当裁判所は本件訴訟においても同条二項の類推適用があるものと解するのが相当であるという見解を採用し、被控訴人が控訴人のみを被告として提起した本訴は適法であると判断する。

なおお被控訴人は亡太郎の妻として戸籍上控訴人と姻族一親等の関係にあるから亡太郎と控訴人間に親子関係の存しないことの確認を求めるにつき確認の利益あるものというべきである。

よつて実体について判断するに当裁判所も、また、被控訴人の本訴請求は正当であると判断するものであつて、その理由は左に付加するほか原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

<証拠>によつても前記引用のかかる認定事実を左右するに足るものではない。

したがつて被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。

よつて民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(浅沼武 加藤宏 高木積夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例